【小説家になろう】鬼人幻燈抄 江戸から平成を歩む一人の鬼の想いが出会いと別れの中で交差する

ローファンタジー
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鬼人幻燈抄ってどんな小説?

 

 鬼人幻燈抄はWeb小説サイトの一つである小説家になろうで掲載されている。

ジャンルはローファンタジー(現実+異能)

和風×現地男主人公×成長をメインテーマとしている本作は

2015/12/18 から連載されていて2016/09/08 に完結済みの作品となっている。

総合評価は51,333pt(本記事公開時点)と高いが、文字数は211万9844文字と超長編作品となっているため本作を読むべきか悩んでいる人も多いと思う。

そこで本記事では鬼人幻燈抄の魅力についてとおすすめのポイントと自身の感想を併せて紹介していきたいと思う。

どんな人におすすめ?

  • 主人公は青少年
  • なろうの中でも硬派な文章が読みたい人
  • 心身ともに成長する姿を見たい人
  • 主人公に自身を投影して物語に没入したい人
  • 感動する物語を読みたい人
  • ハーレムは求めていない人
  • 安易な転生チートは求めていない人

序章とあらすじの紹介

 時代は江戸後期ーー

本作の導入は、甚太(じんた)という男の子の視点から始まる。

 彼は父から虐待を受けていた妹の鈴音と家から追い出され、途方に暮れていた所に出会った元治(もとはる)という男に連れられ、”葛野(かどの)”と呼ばれた人里離れた村で元治とその娘(白雪)と仲睦まじく住むことになる。

 葛野は刀鍛冶の里であったため、刀を打つのに必須な火の土着神に祈りを捧げる巫女『いつきひめ』という存在は神と同一視されるほどの存在であった。元治は巫女『いつきひめ』と村の宝刀『夜来』を守護する『巫女守』であった。甚太は妹を守れなかった惨めさから村で刀の稽古をしながらも、4年が経過した頃には村での生活に慣れていく。

”葛野”編 『鬼と人と』

 時が経ち、先代の『いつきひめ』と『巫女守』が亡くなり白雪は名を改め白夜として『いつきひめ』となった。甚太は18歳となり、巫女守となっていた。しかし、鈴音は不思議と13年前のあの頃と同じ姿のままであったのである。

 飢饉や人の不幸が重なり時世が悪くなり、怪異として赤い目が特徴の鬼が頻繁に出没するようになる。巫女守は鬼を切り村を守り人でもあった。

 鈴音のーー包帯で隠された右目は赤かった。

鈴音にとって甚太は全てであり、その愛は家族愛かそれをも超えるものであった。そのため、自分を妹として接する甚太に呼応するよう彼女の本心を塞ぐかのように自身の妹から女としての成長を無意識に止めていたのであった。

村の人らは鬼である彼女も迎入れ、いつしか甚太は村を大事に想うようになる。

『白雪』と『甚太』でなく『いつきひめ』と『巫女守』として生きる

 幼い頃から互いを想いあっていた『白雪』と『甚太』ですが、代々巫女を輩出する家柄の生まれである白雪は流れものである甚太と結ばれることは難しかったのである。

 二人は幼い頃の思い出の地である丘の上で互いの想いを伝え合いましたが、二人は自分の想いに蓋をして葛野の里を愛し守っていくため『いつきひめ』と『巫女守』として生きることを選択した。

 本来は一人であるはずの巫女守だが、村の長の息子であるため無理矢理ねじ込まれた巫女守の清正と契りを結ぶことになる。

 そして清正もまた自身が村を繋ぐ駒でしかない自分に嫌気が差しながらも、葛太が白雪と清正の契りを快く思っていない素振りを一切見せないことに苛立ちを覚え無力感に苛まされる。

兄と妹の想いにズレが生じ最悪の結果へ

 ある日、村を囲う森の中に鬼が2匹侵入したとの報告が入り、甚太は討伐に向かう。甚太は一匹の高位な鬼と対峙する。長命の鬼には<力>が宿る。強力な力の前でも甚太は奮戦し、甚太は鬼との戦いに勝利しながらも鬼の最後の一撃をもらい意識を失う。

 一方、鈴音はもう片方の鬼と出会い、鬼の<力>により唆され『いつきひめ』の元へ向かう。そこで見るのは清正と『いつきひめ』が子孫を残す役目を果たすための行為に入る瞬間であった。鈴音には鬼と対峙している甚太を捨て、別の男と一緒にいる白雪を許すことができなかった。堰き止めていた甚太への愛情が愛憎へと変化し鬼として成長してしまう。

 甚太が目を覚まし村に戻り、『いつきひめ』の元へ向かい白雪の無事を確かめるも無惨にも目の前で鈴音に殺されてしまう。甚太は妹を奪った目の前の鬼を許せず憎悪し、鈴音は世界そのものであった甚太に敵対感情を向けらたことで、世界に絶望し甚太と敵対し死闘が始まる。

人間と鬼の想いが相対する

 戦いの中で甚太は一匹目の鬼の力である<同化>を受け鬼の力を認知する。二匹目の鬼の助けを受け鈴音は姿を消すことになる。

 死の直前にある二匹目の鬼との対話で鬼が村を襲う目的が鬼の未来を守るためということを知る。

二匹目の鬼は力の<遠見>により以下の事実を甚太に語った。

  • 今より先の170年後の先の未来には鬼神という鬼を守る存在が葛野の地に現れること
  • 鬼神と呼ばれる者が現在この地に住んでいること

 それは奇しくも甚太が自分の想いを犠牲にしても成し遂げたかった『いつきひめ』としての役割を全うする白雪と元治と甚太が愛した葛野の里を守ることと同じ想いであった。

 全てを失い失意の中、甚太は村を去ることを決意した。甚太は村長から『いつきひめ』としての”夜”の名と宝刀『夜来』を受け継ぐ、今の心に住まうのは昔の妹の愛情ではなく憎悪のみ。

170年後に出会う妹に対してどう向き合うのか抱えたまま『甚夜』として旅に出ることになった。

鬼と人との狭間で揺れる鬼人の旅立ちであった。

時は天保十一年。

 西暦にして1840年のことである。

鬼人幻燈抄 『鬼と人と』・9(了)より

あらすじ

 あらすじはこちらになります。

鬼人幻燈抄  作者:モトオ

『人よ、何故刀を振るう』

 江戸時代、まだ怪異が現代より身近で鬼が跋扈していた頃のこと。
 江戸より百三十里ほど離れた山間の集落“葛野”にはいつきひめと呼ばれる巫女がいた。
 護衛役である甚太はいつきひめの為に刀を振るうが、何一つ守れず全てを失う。
 巫女を、惚れた女を殺したのは大切な妹。
 彼女は百七十年後、全てを滅ぼす鬼神となって再び現世に姿を現すという。
 憎しみから鬼となった甚太は、何を斬るべきか定まらぬまま、遥か遠い未来を目指す。
 
 鬼に成れど人の心は捨て切れず。
 江戸、明治、大正、昭和、平成。
 途方もない時間を旅する、人と鬼の間で揺れる鬼人の物語。

 ※この作品はArcadia様にも投稿させていただいております

小説家になろうで読む

最後に〜感想と合わせて〜

 ここまで読んでくださった皆様は既に興味を抱いていることだと思います。

 鬼人幻燈抄は甚夜の葛野の里から始まり江戸、明治、大正、昭和、平成と時代が変化していく中で、彼が出会う人々の感情や想いの影響を受けていき妹に対しての感情と向き合い成長していくファンタジー作品となっています。 

 私が初めてこの小説を読み終えた時の読後感の晴れやかな気持ちは今でも忘れられない。

 それを補完するのは、本作の文章力と構成にある。web小説は直接的な表現やわかりやすい表現が読者に好まれるため、深みのある日本語の美しさを楽しめるのが本作の魅力だと思う。作品に没入できるよう過剰になりすぎない解説を適切な箇所に挟みつつも、しっかりと登場する各キャラの心情を丁寧に描いている。

 ローファンタジー作品として、日本を舞台にしながらも闇夜に鬼が闊歩する社会に流される鬼と人の間を生きる主人公の生き方を見届けて欲しい。

コメント

  1. 匿名さん より:

    いい記事ですね

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